学校健診でむし歯って言われたら???
春は学校で各科の健康診断が行われる季節です。
学校健診でお知らせの紙をもらってしまうと気が重いという親御さんも多いのではないでしょうか。
でも、いざ歯科に行ってみたら、
「治療の必要はありません」
と言われて、不思議に思ったという方もいらっしゃると思います。
また、一度歯医者さんが診断してくれているのに、再度歯医者さんで診てもらって診断書をもらわないといけない、という流れに面倒くささや疑問をもっている方もいらっしゃるかもしれません。
この歯科健診は、学校保健安全法に定められた集団健康診断です。
この健診は確定診断を行うものではなく、お子さんの口の検査のスクリーニングです。
異常なし、定期関節が必要、歯科医師による診断が必要、の3つに分けて視診で検査をしていますが、実は、歯の状態は、目で見る視診だけで確定診断を行うことはとても難しいことが多いのです。
これに対して歯科医院では、明るいライトのもと、しっかりと乾燥させた状態で歯を見ることができますし、エックス線検査などの必要な検査を行うことで、むし歯の状態やかみ合わせの確定診断を行うことができるのです。
では、確定診断ができない健診はなぜ行うのでしょうか。
それは、スクリーニング検査を行うことが早期に口の問題を発見することにつながるとともに、学校という教育の場で
「自律的に自分の健康を守る力を育てる」
「生きる力を育てる」
という課題に取り組むためなのです。
お母さんやお父さんにうるさく言われなくなったら歯を磨かず、間食をするようになってしまって、中高生ではむし歯がたくさんできてしまう、ということでは困りますよね。
そのため、健診を通して口腔の健康状態に意識を向けてもらうことも大きな目的の一つなのです。
学校歯科健診では
■骨格のゆがみ
■顎関節症がないかどうか
■歯並びやかみ合わせ
■歯垢(プラーク)の付着度
■歯ぐきの状態
■歯の状態(むし歯の有無)
などをチェックし、健康診断の結果を保護者全員に通知します。
全員に、がポイントです。
以前は
「紙をもらってくる」
というのは異常があるときだけだったのですが、平成26年の法改正をもって、現在は全ての保護者に結果をお知らせすることになっています。
前述のように、集団での視診のみの健診では診断力に限界がありますが、
「リスクの高さ」
「問題が疑われる場所」
については指摘が可能です。
実際に歯科で検査をしてみると、
「むし歯と言われたのに、問題ないと言われた」
「初期むし歯と言われたのに、実際にはむし歯が進行してしまっていた」
という健診結果と診断結果の乖離は少なからずあります。
ただ、集団健診で指摘された部位について、早めに歯科に相談することで大きな問題を防ぐ事が出来る可能性が高くなります。
ぜひ、面倒がらずにかかりつけ医や近くの歯医者さんに行ってみて下さい。
また、ここでさらに詳しく健診の指摘の内容も見ていきましょう。
「むし歯と指摘された」
「歯周病と言われた」
という中には
「CO」
「GO」
という指摘も入っています。
CはCaries(むし歯)のことで、GはGingivitis(歯肉炎)の頭文字です。
ではOは何でしょうか。
これはObservation(要観察)の意味で、治療の必要まではないことを示します。
つまり、COは初期のむし歯、GOは初期の歯肉炎を指し、しっかり清掃したり、食生活の見直しを行って口腔内の環境を改善すれば、治療せずに回復する可能性のある状態を示します。
この初期の段階を早期に見つけて、改善や治療につなげることが学校健診の大きな意義の一つです。
2006年のデータでは、恵那市の児童で1536本のCOが発見されましたが、1年後には37%が健全歯に戻り、進行が停止した歯は55%、治療に移行した歯は8%であり、2年後でも治療となった歯は12%にとどまったということが示されています。
健診の後、しっかり歯医者さんに通い、正しい歯磨き、食生活の改善を行うことでこの数字はさらに改善していくことができます。
穴が開いていない初期むし歯の段階で進行を止めたり、乳歯がむし歯になったとしても永久歯はむし歯にしないようにすることがとても大切です。
学校健診で伝えられた内容を生かして、かかりつけの歯科医院をもち、お子さんがこれから一生使う歯を大切に守っていきましょう。
当院では、必要な治療をしっかり説明してから行うとともに、再度口腔状態が悪化しないために、ご本人やご家族に歯磨き指導、食生活指導を効果的に行っています。
健診をきっかけにいらして下さった患者さんが、今後一生使う歯をしっかり守っていけるようにお手伝いをしております。
健康な口腔状態を保つため、健診をきっかけとして相談してみて下さいね。